なぜ少年は、生き残ることができたのか。「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」  結末




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解説

カナダ人作家のヤン・マーテルが2001年に発表し、ブッカー賞を受賞した世界的ベストセラー小説「パイの物語」を、「ブロークバック・マウンテン」「ラスト、コーション」のアン・リー監督が映画化。

第85回アカデミー賞で全11部門にノミネートされ、アン・リーが自身2度目となる監督賞受賞を果たした。

 

パイの物語(上) (竹書房文庫)

パイの物語(上) (竹書房文庫)

 

 

 

パイの物語(下) (竹書房文庫)

パイの物語(下) (竹書房文庫)

 

 

 

あらすじ

インドのボンディシェリで動物園を経営していたパテル一家は、カナダ・モントリオールに移り住むことになる。16歳の少年パイ(スラージ・シャルマ)と両親、そして多くの動物たちは貨物船に乗り込むが、太平洋上を航行中、嵐に見舞われて船は沈没してしまう。

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ただ一人パイは救命ボートに逃れて一命を取り留めるものの、そのボートにはリチャード・パーカーと名付けられたベンガルトラが身を潜めていた。わずかな非常食で飢えをしのぎ、家族を亡くした悲しみと孤独にも耐えるパイ。そんなパイと一頭のトラとの227日間にも及ぶ太平洋上の漂流生活が始まった……。

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結末

 

物語は、成人したパイ・パテル(イルファーン・カーン)が、カナダ人小説家(レイフ・スポール)に、自分の身に起きた長期漂流生活について語る、ということで始まる。

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パイは心を通わせ、トラを飼い慣らすことを試みるが、結局、それは叶わなかった。メキシコに漂着したパイは、トラが振り返りもせずにジャングルへと入っていく後ろ姿を見ただけだった。

成人したパイ・パテルは、”もう一つの話”をカナダ人小説家に語りかける。

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ボートには母親、野蛮なコック、骨折した仏教徒の船員が乗っていた。コックはネズミを日干しにして食べるなど、野蛮だったが生きるための知恵があった。

骨折した船員の脚はケガをしており、壊死し始めた。そこで、脚を切断する必要がある、と提案する。パイたちは船員を押さえつけ、脚を切断することにした。だが、間もなくして船員は死んでしまう。

その脚を餌に、コックは魚を獲った。それに抗議したパイの母親だったが、コックは聞く耳を持たなかった。

さらに、ウミガメを捕まえる際、パイが失敗して逃してしまうと、コックはパイを殴った。その姿にいつかパイも殺されてしまうと考えた母親は、パイをイカダに乗せて逃げさせることにした。それに激昂したコックは、母親をナイフで刺し殺してしまう。コックは、その遺体を利用して魚を獲った。

 

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その夜、パイはコックを殺害する。コックも人として一線を越えたことを後悔していたのか、抵抗はしなかった。パイは、コックの遺体を利用して、魚を獲ることにした。

こうした話を聞き、カナダ人小説家は1つの結論に至る。

・船員=シマウマ
・コック=ハイエナ
・母親=オランウータン
・パイ=トラ

であると。

この2つのストーリーを、パイは漂着直後に保険調査員へ同様に話をしている。カナダ人小説家が見た保険調査員の調査結果の書類には、「トラと漂流するという非常に困難な状況に…」と書かれており、トラとの漂流した日々が事実として記載されていた。

カナダ人小説家も、トラとの漂流の日々が真実であると考え、そのストーリーを小説にすることを決めたのだった。