警察じゃけぇ、何をしてもえぇんじゃ「孤狼の血」あらすじと結末




解説

第69回日本推理作家協会賞に輝いた柚月裕子の警察小説を映画化したバイオレンス作。暴力団対策法成立直前の昭和63年の広島のとある街を舞台に、刑事とやくざたちの熱い生きざまが描かれる。手段を選ばない捜査方法でやくざとの癒着が噂されるベテラン刑事を役所広司、その部下となる新人刑事を松坂桃李が演じる。

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予告編

あらすじ

暴力団組織が割拠する広島の呉原では、新たに進出してきた広島の巨大組織・五十子会系の加古村組と地場の組織・尾谷組との抗争の火種がくすぶり始めていた。そんなある日、加古村組の関連企業の社員が失踪し、殺人事件と判断したベテラン刑事の大上と新人の日岡は事件解決のために奔走。やがて、暴力団と警察を巻き込んだ報復合戦へと発展していく。

結末

ある日、尾谷組のシマであるクラブ梨子に挑発に来ていた加古村組の吉田が梨子のママにセクハラをしたことが許せなかった柳田タカシは、短刀を持って吉田を襲うが逆に返り討ちにされ、吉田に拳銃で撃たれ死亡する。 激怒した尾谷組の若頭一ノ瀬は加古村への報復を始めるが、大上はヤクザ同士の間に入り、落としどころをみつけ均衡を保とうと奔走する。

しかし、事情を知らない日岡は報復に乗り出した尾谷組の若い衆を逮捕してしまう。一ノ瀬は全面戦争を決意するも、大上は3日の猶予を申し出、呉原金融の上早稲の首(遺体)を見つけ、加古村組を挙げることを誓う。

大上の違法捜査の証拠と尾谷組との関係を記録した日岡は、上層部に大上の不正を訴える。日岡は県警本部から大上の内偵のために配属されたスパイであり、上司の監察官嵯峨に大上の早期逮捕を訴える。しかし嵯峨は内偵を続行するよう命じ、ヤクザとの関係を綴った「大上の日記」を見つけるように言う。 日岡は大上と行動を共にするうちに、14年前の抗争で五十子会幹部の金村が殺害された事と、その死に大上が関与している疑惑を持つ。

大上は梨子ママと共に加古村組の吉田をラブホテルに誘い出して拘束し、睾丸から真珠を抉り取る凄惨な拷問を行う。

吉田は上早稲を脅迫して呉原金融の売り上げを横領させていたこと、更に金を要求された上早稲が五十子会が経営する「ホワイト信金」の金庫から金を盗み出したために加古村組から制裁を受けた事を白状する。シッポを掴んだ大上は、加古村の息がかかる養豚場に向かい、そこで働く善田大輝を薬物所持の疑いで引っ張る。これは捜査じゃないと止める日岡を取調室から追い出し、大上は大輝を拷問して上早稲の首がとある島に埋められたことを突き止める。さっそく捜索隊が組織され、島に埋められた上早稲の首と胴が発見され、苗代ら加古村組組員は全国に指名手配される。事件解決も目前と思われた矢先に、大上は安芸新聞社の記者高坂のタレコミで、吉田に対する拷問などが署長の毛利に知れたため謹慎処分となる。

猶予の3日は過ぎ、日岡は何とか抗争を止めようと奔走するが、ヤクザ相手に人脈の無い日岡は相手にされず、尾谷組は五十子会の幹部を銃撃し抗争が勃発してしまう。 ある夜、日岡が家に戻ると、侵入した大上がハイライトを吸いながら酒を飲んでいた。日岡は慌てて大上の不正を記録したカセットテープと日誌を片付けた。安芸新聞の高坂が署長にタレこんだ内容の中には、その場にいた者しか知らないはずの吉田への拷問の詳細までもが含まれていたという。

謹慎の最中も大上と日岡は抗争を止めようと説得するも、五十子会は手打ちの条件として尾谷の引退と一ノ瀬の破門を突きつけ、当然聞き入れない一ノ瀬からは相手にされなかった。 クラブ梨子で日岡はヤクザに深入りしすぎだと大上に忠告する。広島の2大ヤクザの抗争に巻き込まれ、大上に翻弄される日岡は、薬局の桃子の家へ行き桃子に慰めてもらう。その日を境に大上は行方不明となる。

愛媛県内に潜伏していた苗代らが呉原東署に逮捕された時を同じくして加古村組長以下幹部が殺人罪などで大量検挙され、毛利署長は上早稲殺害事件の解決を宣言するも、大上は4日間行方知れずであった。 五十子会に拉致されたと考える日岡は捜索を申し出るが、嵯峨は「大上の日記」を手に入れろと掛け合わない。豪を煮やした日岡は嵯峨を追求する。日岡が報告した内容を漏洩したのは嵯峨であった。

日岡は瀧井と面会し、協力を仰ぐ。ヤクザに深入りしすぎたと言う日岡に対し、大上を良く知る瀧井は、大上にとってヤクザは駒でしかなく、カタギを守ることしか頭にないと告げられる。また日岡は梨子ママに14年前の金村殺しは大上の仕業ではないかと話すが、ママは金村を殺したのは自分であり、大上が庇ってくれたことを告白し、上層部が欲しがっていた「大上の日記」を日岡に渡す。「大上の日記」には県警上層部の不祥事が詳細に記されており、大上はメモを盾に警察上層部さえも抑えていたことが分かる。さらに日岡が初めから監察官であることまで記されていた。

翌日、港で大上の水死体が上がった。遺体には明らかな暴行の跡と十数か所の刺し傷があったにもかかわらず、呉原東署は記者会見で睡眠薬を飲んだ上に酒に酔って海に落ちたと報じる。

大上の胃に大量の豚の糞が入っていたことを聞いた日岡は、養豚場へ行き大輝を問い詰め、必死に証拠を探し、豚の糞の中から大上が使っていた「狼のジッポー」を見つけだす。日岡と別れた直後、五十子の説得に向かった大上は逆に拉致されリンチに遭い、拷問を受けたことを根に持つ大輝に豚の糞を食わせられ、ドスで刺され殺害されたのだ。大上を殺害する様子を話しながら半笑いする大輝に日岡は激怒し、口に豚の糞を押し込み、激しく殴り付け半殺しにする。

自宅に戻った日岡は、大上の不正を記録したカセットテープと日誌を破棄しようとする。しかし日誌は大上の手によりヤクザを挙げるために不都合な記録は黒塗りで塗りつぶされ、さらに「こういうとこがダメなんじゃ」「われの目は節穴か」と大上の注釈がビッシリと書かれていた。大上は日岡が監察官であると知りながらも、マル暴の刑事として育てていた。自分の死を悟った大上は、梨子ママに日岡に託すよう日記を預けていた。ダメ出しばかりの注釈の中、最後のページにはこう書かれていた。

「ようやったのう、ほめちゃるわ」

大上なりの教えと思いを知った日岡は、大上が遺したジッポーとタバコを握りしめて号泣する。

日岡は瀧井と、広島の政財界の大物が集まる会合「やっちゃれ会」に出席する五十子を一ノ瀬に殺害させる計画を立てる。 「やっちゃれ会」には五十子、瀧井夫妻のほか、県警本部長も参加しており、その中には嵯峨の姿もあった。五十子がトイレに立つのを確認した日岡は裏に回り、隠れていた尾谷組の一ノ瀬ら一派を引き入れる。トイレで一ノ瀬は五十子を追い詰め、日本刀で首を切断し小便器に突っ込む。

一方、瀧井はカチコミに驚く嵯峨ら県警幹部を裏口から逃がす。待機していた呉原東署員がなだれ込み、尾谷組の若い衆の藤岡が一ノ瀬の身代わりとなって殺人を自白するが、日岡は一ノ瀬に手錠をかける。かくして五十子は死亡、一ノ瀬は逮捕となり、日岡は尾谷組を利用し裏切るという手段を使いながらも一連の抗争は幕を閉じる。

後日、大上の葬儀の場で日岡は嵯峨に「大上の日記」を渡す。上機嫌の嵯峨は、内容がヤクザとの癒着ではなく県警幹部の不祥事である事に動揺し、さらに最後のページには嵯峨が五十子殺害の当日逃亡したことが日岡の手で書き加えられていた。弱みを握られた嵯峨は日岡を手元に置こうと本部勤務を命じるが、日岡は呉原東署での勤務継続を申し出る。

日岡が大上の墓参りをしていると、薬局の桃子が現れる。桃子は大上の美人局を手伝っており、さらに日岡を慰めるために大上が引き合わせていたことを知る。日岡は全て吹っ切れたように笑うと、タバコを咥える。その手にはハイライトと、大上の形見である狼のジッポーが握られていた。