解説
恋愛小説の名手として有名な佐藤正午の同名小説の映画化。ミステリー仕立てで描かれる新しいタイプのラブストーリー。ネプチューンの原田泰造が映画主演に初挑戦。どこにでも居そうな“いい奴”役で、『花』の瑞々しい演技も記憶に新しい牧瀬里穂や『ホタル』の笛木優子と絶妙なアンサンブルを見せる。人生の岐路に立った時、誰もが考える”もしもあの時……”というほろ苦い後悔や、少し甘酸っぱさが残る切ない物語。
あらすじ
ある日唐突に、恋人のみはる(笛木優子)が失踪し、途方に暮れる三谷(原田泰造)。ワケがわからないまま仕事とプライベートの板挟みで苦しんでいる彼を、同僚の鈴乃木(牧瀬里穂)が静かに見守っていた。
結末
「リンゴを買って来る」。そう言い残して、半年付き合った恋人・みはるが姿を消した。わずかな手がかりを頼りに、彼女の行方を捜し始める三谷。やがて彼は、幾つもの偶然が重なって、彼女が静岡へ向かったことを突き止める。だが、その後の足取りは杳として掴めず、知らぬ間に部屋も引き払われてしまった。何故、彼女は失踪したのか?何故、自分は一番大切な人の心の変化に気づかなかったのか?失意のまま、半年の時が流れた。ある日、三谷はみはるの生き別れた父・江ノ旗耕一が福岡の能古島にいることを知り、彼を訪ねる。果たして半年前、みはるは父に会いに来ていた! しかし結局、その父も彼女のそれからの消息を知らず、それを機に三谷はみはるのことを諦める決意をするのであった。ところが5年後、同僚の鈴乃木早苗と結婚し一児を儲けた彼は、出張先の福岡で思いがけずみはるの行方を知ることとなる。彼女は、伊万里で陶芸をしているらしい。そこで、伊万里に向かった三谷はみはると再会、失踪の訳を聞き出した。
失踪の原因――それは、あの日に配達された早苗からの手紙にあった。そこには、早苗の三谷に対する愛が綿々と綴られており、みはるはその想いの深さに負けて彼の前から姿を消したのだ。では、もしあの時別の選択をしていたとしたら? それでも、今と結果は同じになっていたに違いない。そう確信した三谷は、みはると別れ、妻子の待つ東京へ帰って行くのだった。。