戦いという現実を目の当たりにし、少年は大人になる。「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」 あらすじと結末




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解説

『ガンダム』シリーズの初OVA化作品であり、『ガンダム』の生みの親であり育ての親でもある富野由悠季以外の手で初めて制作された作品でもある本作。これまでの、ガンダムを操る側からの視点で描く手法ではなく、アル少年とジオン軍新兵のバーニィという2人の主人公を軸に、ガンダムを倒す側の視点で描いた意欲作となる。またその後の『ガンダム』サーガに「裏面史」という作劇方法を確立させた先駆け的作品ともなっているのだ!

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あらすじ

一年戦争末期、地球連邦軍が新型ガンダムを開発しているという情報を掴んだジオン公国軍の特殊部隊「サイクロプス隊」は、機体を奪取すべく北極の連邦軍基地を襲撃する。しかし作戦は失敗し、目標物は宇宙へ飛び立ってしまう。

その後偶然入手した情報から、新型ガンダムが中立コロニーのサイド6へ運び込まれたと知ったジオン軍はサイクロプス隊をそこへ送り込み、再び新型ガンダムの奪取の任務に就かせる「ルビコン計画」を発動。

新型ガンダム奪取作戦を縦糸に、サイド6・リボーコロニーに住む小学生アルフレッド・イズルハ(アル)とサイド6へ潜入したサイクロプス隊の新兵バーナード・ワイズマン(バーニィ)との関わりを横糸に、物語は展開していく。

結末

主人公のアルは11歳の小学生。

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この世界では、「連邦」と「ジオン」の二国が戦争の真っ只中にあるが
アルの住むコロニーは中立で、戦争の実感もなく、至って平和。

ミリタリー好きのアルは、学校のクラスメイトたちと
ジオンの方がかっこいいだの、連邦がすげえ兵器を開発しただのと
ヒーローモノのノリで語り合いながら、毎日を過ごしていた。
口うるさい母親に悩まされることもあるけれど、
最近隣の家の綺麗なお姉さん、クリスが地球から帰ってきたりして、概ね楽しい日々。

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しかしそんなある日、突如連邦とジオンの兵器が
アルの住むコロニーに現れ、戦闘を開始する。
初めて見る戦争に興奮したアルは、撃墜されたジオンの兵器を追って森の中へ。
そこで、もう一人の主人公であるパイロットの青年・バーニィと出会う。

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うるさくまとわりつくアルを邪険に扱うバーニィだが、
アルが持っているビデオの中の映像を見て驚愕する。

実はアルは、別居中の父親を空港に迎えに行った際、
偶然にも連邦の新兵器をビデオに収めていたのだ。
階級章と引き換えに、アルからそれを譲り受けたバーニィは、
それがもとで隊員4人の「サイクロプス隊」

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に編入し、
その連邦の新兵器を破壊する作戦、「ルビコン作戦」を命じられる。

首尾よく民間人に扮し、アルの住むコロニーに再潜入したサイクロプス隊。
だがバーニィは、またまた偶然アルと遭遇してしまう。
結局、悪知恵を働かせたアルは、アジトまでついてきてしまい、
仲間に引き入れたほうがいいと判断した隊長によって、
アルはサイクロプス隊の一員、バーニィはそのお守り兼監視役となる。
部隊マークをもらって鼻高々のアルと、苦々しい気分のバーニィ。

だが、アルとバーニィは仲良くなっていく。
アルには「俺はエースパイロットなんだぜ」と見栄を張るバーニィだが、
実は学校を出たばかりの新米軍人。
家に帰ったアルの監視をしている最中、泥棒と間違われて
隣家のお姉さん、クリスに殴り倒されてしまう。
アルと共謀してなんとか言い訳をし、誤解を解いたあと、
なんとなくいい感じになるクリスとバーニィ。
だが、実はクリスは、連邦の兵器のテストパイロットだった。

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当然ジオンのバーニィとは敵同士だが、ふたりはお互いそれを知らない。

そんな中、ついに作戦決行の日が来る。
新兵器破壊のために、連邦の兵士に成りすまして工場に潜入するが
バーニィのちょっとしたミスにより素性がばれてしまい、激しい銃撃戦に。
結局、バーニィを除く三人は戦いの中で死亡。
新兵器の破壊も叶わず、ルビコン作戦は失敗する。
これにより、ジオンの本部にいる作戦の指揮官は、
核攻撃を行い、コロニーごと新兵器を破壊することを決定した。

作戦は失敗した。核攻撃が行われるクリスマスまでに母親と街を出ろ。
アルにそう伝えるバーニィ。だが、アルは納得しない。
「このまま逃げるの?僕たちで新兵器をやっつけようよ!バーニィはエースなんでしょ!?」
「できっこないさ! 俺はただの新米なんだ!」
「嘘だ…! バーニィのばか!」

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アルと喧嘩別れしたまま、バーニィは空港へ向かった。だが、心は晴れない。
コロニーの住民を見捨てて逃げるのか。死んだ仲間にどう言えるのか。
「自分でついた嘘を貫き通す度胸もないくせに!」
不意に耳に飛び込んできた、見知らぬ女の言葉に促され、バーニィは決心した。

警察に駆け込むも相手にされず、憔悴していたアルのもとに、一本の電話がかかってくる。
「あいつを倒すために、手伝ってくれるか、アル?」
「もちろんだよ! ありがとう、大好きだよバーニィ!」
協力しあいながら、壊れた兵器を修理し、武器になるものを集めるふたり。
絶対的に不利な戦いに出る前に、バーニィはアルに小包と一枚のディスクを託した。
作戦前夜、アルは祈る。コロニーのみんなと、バーニィの命が助かりますように…

作戦当日。出撃したバーニィは、連邦の新兵器と対峙する。
連邦側のパイロットは、クリス。

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ふたりがお互いに気づかないまま、ついに戦闘は開始された。
一方その日は、別居していたアルの父親が帰ってくる日でもあった。
アルが母親とともに空港に行くと、父親はなにげなくこんな言葉を口にする。
「そういえば、船の近くで戦闘があったよ。
降伏したジオンの船には核兵器があったそうだ。なんで中立のこのコロニーに…」
それを聞いたアルは走り出す。

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もう戦う必要はないんだ、バーニィに伝えなきゃ…!

クリスとバーニィの戦闘は激しさを増していく。

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なんとかアルが戦いの場にたどり着いたとき、二つの機体はすでに満身創痍の状態だった。

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「やめて、バーニィ!もう戦わなくていいんだ!やめてー!!」
アルの絶叫は届くことなく、バーニィの機体はクリスの機体にとどめを刺す。

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同時にクリスの武器がバーニィのいるコクピットを貫き、両機体は爆発した。

戦闘終了後。連邦軍の兵士たちが集まってきた。
「ジオンのパイロットは?」「バラバラだ、ミンチよりひでえや」
呆然としているアルの目の前を、
気を失ったクリスがストレッチャーで運び出されていく…。

バーニィがアルに託したディスクの中には、バーニィからのメッセージが入っていた。

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「この包みの中には、ジオン軍の核攻撃作戦の証拠が入っている。
 作戦が失敗したら、これを警察に持っていけ。
 俺が直接自首しようかとも思ったが…何ていうか、
 うまく言えないけど、アイツと戦ってみたくなったんだ。
 俺は多分死ぬだろうが、そのことで連邦軍の兵士や
 敵のパイロットを恨んだりしないでくれ。彼らも俺と同じで、
 自分のやるべきことをやってるだけなんだ。俺からの最後の頼みだ。
 もし生き延びたら、かならずまた会いにくるよ。約束だ。
 これでお別れだ。じゃあなアル、元気で暮らせよ!クリスによろしくな!」

新学期の朝。
神様が祝福しているようないい天気だ。食卓には、母親と父親の姿がある。
登校途中、アルは腕に包帯を巻いたクリスと会った。地球に転任することになったという。
「急でごめんね。バーニィにも、アルからよろしく伝えておいてくれる?」
「…うん。バーニィもきっと…きっと、残念がると思うな…」
帽子のつばで顔を隠しながら、アルはそう答えた。

学校は、戦争で破壊されていた。このコロニーでは小競り合い程度の戦闘しかなかったが、
それでも被害は市街地にまで及んでいたのだ。
グラウンドでの校長の演説を、クラスメイトたちは退屈そうに聞いている。
「長い戦争がついに終わり、平和が訪れました。しかし我々は多くの家族や友人を失った。
この平和が多くの犠牲の上に勝ち取られたものであることを、
君たちには忘れないで欲しいと思います…」
堪え切れずアルは涙をこぼす。驚くクラスメイトたち。
人目もはばからず泣き出すアルに、クラスメイトたちは懸命に慰めの言葉をかける。

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「泣くなよアル、戦争はまたすぐ始まるって。今度はもっともっと派手で、でっかいやつだぜ!」