解説
本作は小学館の漫画雑誌「マンガくん」が「少年ビッグコミック」に誌名変更される際の新連載作品の一作であり、1979年から1986年までの8年間にわたり連載された。精緻なメカ描写や、リアリティのある舞台設定、空軍基地エリア88の一癖ある傭兵たちが交わす哀愁の漂うセリフなどの独特な特徴から広範な支持を受け、あだち充の『みゆき』と並ぶ同誌の看板作品となり後発の作品にも多大な影響を与えた。単行本は全23巻、復刻版(ワイド版)は全10巻、文庫版(スコラ漫画文庫シリーズ版、MFコミックス版)と完全版(メディアファクトリー・フラッパーシリーズ)は全13巻が刊行されている。第30回(1984年度)小学館漫画賞受賞。
あらすじ
大手航空会社である大和航空のパイロット候補生・風間真(かざま しん)は、社長の娘・津雲涼子との結婚も決まり、その将来を嘱望されていた。だが、同期のパイロット候補生で親友・神崎の策略により激しい内戦の続く遠く中東のアスラン王国の傭兵部隊へ送り込まれる。
そこは地獄の最前線 ─ 作戦地区名エリア88。除隊するには高額の違約金を払うか、契約満了まで生き延びるかのみ。
真は日本へ生還するのが目的とはいえ、戦闘機乗りとして敵戦闘機の撃墜によって得られる報奨金を稼ぐ傭兵稼業に染まっていく。その長い戦いの中での数々の出会いにより、真はさらに複雑な運命へと導かれることになる…。
元々は88司令であるサキ王子の父親と、叔父の王位争いであったアスラン王国の内戦は、いつしか戦争をコントロールして巨大な利益を生ませる軍需産業群の組織「プロジェクト4」の介入を許してしまう。その黒幕であるイタリアン・マフィアの首領に収まる神崎。プロジェクト4の後ろ盾を得た反政府軍の総攻撃によりアスランの首都は反政府側に掌握され、エリア88も一転、追われる側となってしまう。
その最中、ザク国王の亡命行でフランスに飛び、同時にサキから特別に除隊を許される真。だが、両手を血に染めた身であることから涼子に会えずにいた。そして、平和の中にあっても戦いに身を置いた経験によって満たされぬ日々を過ごしていた真は、つかの間の平和に別れを告げ、自らの意思で再び特殊部隊の傭兵としてアフリカの某国に赴く。しかし、そこでも部隊長の裏切りに遭った真は、アフリカの小国・バンバラの大統領一家と共に逃亡。激闘の果てに辛くも生き延びた真は、結果的に大統領の莫大な資産を相続して大富豪になる。真は遂に日本へ戻り、その莫大な資金を武器に活動を開始。古巣である大和航空をプロジェクト4の手から買い戻すほか、壊滅状態にあったエリア88へ密かに原子力空母を斡旋するなどの援助を行う。
祖国・日本に戻った真は、数奇な運命を経て涼子と再会し、ようやく手に入れた平和な生活に順応しつつあった。しかし、その真の前に神崎が姿を現わし、互いの出生の秘密、ひいては真への憎悪の理由を明かすと共に、自らの手で世界を地獄の業火で焼き尽くす事を宣言する。真は愛する人々を守るため、第二の故郷・アスランとそこで戦う仲間のため、そして神崎との因縁に終止符を打つために、再びエリア88のパイロットとして最終決戦へと向かう
結末
ここは中東。作戦地区名エリア88。最前線中の最前線。地獄の激戦区。
生きて滑走路を踏める運は全てアッラーの神任せ。おれたちゃ神様と手を切って、
地獄の悪魔と手をとった、命知らずの外人部隊。
同じ孤児院で育ち、大和航空民間機パイロットとして将来を約束されていた、
航空学校の生徒、風間真と神埼悟は親友同士。だがある日、泥酔状態の真は
神崎にだまされてアスラン外人部隊の契約書にサインをしてしまった。
風間真がエリア88から日本に帰る方法は2つ、3年間の契約期間を全うするか、高額の違約金を払うか。
序盤は死と隣り合わせながらも何故か明るく個性豊かな88の面々と、
そんな彼らにも平等に降りかかってくる死が描かれる。
同時に日本では神崎が1パイロットの身から大和航空を乗っ取る。
また、真の恋人で大和航空の社長令嬢である津雲涼子は真を助けるために奔走する。
中盤、エリア88で行われている戦争の背景が、エリア88の最高指揮官であり
アスラン王国空軍中佐・アスラン王国の王子でもあるサキ・ヴァシュタールを
中心に描かれる。そんな中現れ攻撃を仕掛けてきた、国籍不明の陸上空母は、
エリア88でデータを集めるための武器商人の実験機だった。
その頃神崎は、運営の失敗で大和航空を失いつつもさらに力をつけ世界に進出。
陸上空母の背後にも神崎の影があった。
涼子は大和航空の株を売却し真の違約金を払おうとするも大和航空の株が大暴落。
別の手段を模索する。そのさなか、サキと会い真や神崎のことを伝えたり、
お約束の真とのニアミスがあったりする。
陸上空母には勝ったものの戦力の大半と基地を失ったエリア88チームは戦力の再編を
行う。傭兵部隊はアスラン正規軍に組み入れられ、違約金では脱退できなくなる代わり
に、真にも大尉の階級が与えられた。
一方、大和航空株暴落後、ファッションブランドを起こしアスラン王国ごと買い上げようと
していた涼子だったが、真と再会し、また日本に一人残されると真とともに神崎の野望
を打ち砕くため世界の婦人団体を率先して反戦運動を繰り広げる。この圧力でプロジェ
クト4の支援団体が分解を始めた。
新しい基地で新たな仲間とともにしばらくは序盤さながらの小競り合いが続く。
神崎は武器の供給で世界中の戦争を操作するというプロジェクト4を、世界の武器商人と計画する。
手始めに産油国を手に入れるため、神崎はプロジェクト4の兵を使ってアスラン反政府軍を乗っ取る。
プロジェクト4の圧倒的な戦力の前にエリア88やアスラン正規軍ははなすすべもなく敗れる。
神崎はアスランに傀儡の新王を立て次にスエズ運河の占領を企てる。
冷戦による複雑な政治背景のため、今プロジェクト4がスエズ運河を占領しても大国は手出しをしないのだ。
「サキがくたばるのをこの目で見たい」エリア88の傭兵たちが散り散りに敗走する中、
そんな理由でサキに着いて来た者もいた。まともな基地も無い中、彼らはプロジェクト4の
計画を阻止するため、反政府軍として戦うのであった。
真はサキの命令でエリア88を解任されフランスに戻ったが、彼の戦士の魂は
最早日常生活に戻ることを許さなかった。真は偶然出会ったフランス軍中佐、
ローラン・ボッシュの誘いで南アフリカで行われる作戦に参加することのなる。
作戦の結果、色々あって大統領の遺産十数兆を手に入れてしまった真はその金で
未だ戦っているエリア88に空母を送る。その後日本に帰りついに涼子と再開し平和な
生活を手に入れたが、神崎の野望を知り再び戦うことを決意する。
日本国内で再び真と神崎は対面する。神崎が真を憎む理由は二人の出生の秘密にまで遡るものだった。
プロジェクト4の支援団体は戦争による利益に疑問を感じ、スエズ運河攻略に
理不尽な期日を要求する。エリア88の妨害もあり神崎はどんどん追い詰められていく。
プロジェクト4はスエズ作戦のためにアスランとスエズ運河の間にあるタンドリアに
攻撃を仕掛け、アスラン対タンドリアの戦争が始まった。エリア88はこの隙を狙い
アスランの首都奪還に乗り出す。真も自らもエリア88に戻り戦った。
タンドリアの被害が少ないうちに政権を奪回して和平交渉を行わなければ
和平条件としてタンドリアから領土を要求されてしまう。黒幕がプロジェクト4だと
知っているのはエリア88だけなのだ。
この戦いで全てが決まる。エリア88の主要な面々はキムと真以外皆死んだが、
神崎も部下に裏切られ、プロジェクト4は壊滅した。
一人残った神埼は真に一騎打ちを挑む。神崎は実戦の経験は無いがかなりの
才能を持っている、一方の真は前の戦いで怪我をしていた。
結局神崎は死んだが、真も傭兵になる前の記憶を失っていた。パリの航空学校で
事故を起こしたと勘違いしている真と涼子は幸せな生活を取り戻し、エリア88のことを
知るのはキム一人だけだった。