解説
武力による検閲から本を守る防衛組織、図書隊の活躍を描く、人気作家・有川浩のベストセラー小説を実写映画化。図書隊に入隊し、過酷な訓練に挑むヒロイン、郁を榮倉奈々、彼女を一人前の隊員にしようとする厳しい班長の堂上を岡田准一が演じる。監督は『GANTZ』シリーズを手がけた佐藤信介。
あらすじ
近未来の日本。各メディアにおける風紀を乱す表現を武力の行使をも厭わず取り締まる『メディア良化法』が施行された。それから30年後の正化31年、『メディア良化法』による検閲に対抗し読書の自由を守るために結成された図書館の自衛組織・図書隊に笠原郁(榮倉奈々)が入隊する。
郁は高校生のときに図書隊隊員に読みたい本と彼女自身を助けてもらったことがあり、その隊員に憧れていた。郁の担当教官となった二等図書正・堂上篤(岡田准一)は非常に厳しく、郁を助けた隊員のことも愚かだと非難する一方、絶妙なタイミングでフォローを入れてくる。
堂上の厳しい指導を経て、郁は女性としては初めて図書特殊部隊ライブラリータスクフォースに配属されるまでに成長。堂上や小牧幹久(田中圭)の下、エリート・手塚光(福士蒼汰)や業務部・柴崎麻子(栗山千明)といった同期の仲間に囲まれ過酷な訓練と図書館業務をこなしていく。
そんな中、郁はなぜか優しく助けてくれた憧れの隊員とは真逆であるはずの堂上のことを意識しはじめる。ある日、小田原にある情報歴史図書館が閉館されることになる。情報歴史図書館が有するすべての資料は関東図書隊に移管されることになったが、その中には『メディア良化法』に関する報道資料が含まれていた。それは『メディア良化法』成立の裏側に触れていると言われており、メディア良化委員会はその報道資料を狙っているため、移管の日には図書隊とメディア良化委員会との衝突が避けられないことが決定的だった。本来タスクフォースは危険な前線に立つべきであるものの、郁は図書基地司令・仁科巌(石坂浩二)の護衛にまわることになる。戦闘配備から外されたことにショックを隠せない郁に、堂上は何も言わないでいた。全面対決がはじまるそのとき、堂上の耳に、思いもよらぬ事件が起こったことが入ってくる……。
結末
日々の訓練や業務にも慣れてきたころ、特殊部隊に重要な任務が下りた。
私立図書館として膨大な量の資料を有する「情報歴史資料館」館長、
野辺山宗八の死去に伴い、図書館の資料をすべてを
郁と堂上の勤める関東図書基地の付属図書館、
武蔵野第一図書館に移動することになったのだ。
野辺山宗八は、かつてメディア良化法が成立してから10年程たった頃、
当時公共図書館の代表であった日野市立図書館が何者かに襲撃された
「日野の悪夢」の被害者である。
図書が火炎放射器で全滅、利用していた一般市民までもが
銃口を向けられたこの事件で、野辺山宗八は意識不明の重体、
当時日野図書館の館長であった稲嶺和市は死亡、
関東図書基地の現司令官仁科巌は右足を失うことになった。
情報歴史資料館には日野の悪夢やメディア良化法が成立する以前の
メディア良化委員会の不法行為の資料が隠されているという噂があり、
資料を輸送する際の襲撃が予想された。
特殊部隊はその輸送中の攻撃からの防衛が任務だ。
ちょうど同じ日、亡くなった野辺山宗八の告別式が予定されていた。
仁科司令もその告別式に出席することになり、郁は輸送の任務ではなく、
仁科司令の警護応援にあたることになった。
実力不足だと堂上に宣告された郁は納得できず、手塚や堂上の同僚小牧も
「今回は嫌われても仕方ないね」とその判断に難色を示す。
当日、メディア良化隊の攻撃は、図書隊の防衛戦力を
はるかに越えるものであった。
堂上や小牧の先導もあってなんとか持ちこたえていたが、
突然司令部から撤収の命令が下りる。
告別式に出席していた仁科司令とそれに同行していた郁を
誘拐したという脅迫が届いたのだ。郁の伝言により居場所を突き止めた
堂上は、待機の命令を無視して小牧と共に郁の元へ向かう。
郁と仁科司令は閉館した図書館に閉じ込められていた。
彼らを誘拐した男はメディア良化法を賛同する団体と名乗ったが、
仁科司令は幹部の男が「日野の悪夢」の時に見た男と
同じブレスレットをしていることに気づく。
この男は見せしめに、司令が形見のように持ち歩いている日野図書館の
最後の一冊を燃やしてしまう。
燃やされた本を前にしてへたり込む、郁。
居場所を特定した堂上と小牧が図書館に着いた。
圧倒的な武力数により窮地に追い込まれるが、
遅れて援護に来た図書隊員により無事救出される。
この事件をきっかけにメディア良化法に
疑問を持った報道が大々的に行われるようになった。
図書館は一時の平和を取り戻し、郁たちも普段の業務に力を入れる。
堂上は郁に戦力外と宣言したことを撤回し、郁はこれからも
図書隊としての仕事に力を入れ、いつかは堂上を越えてみせると宣言する。
まっすぐに彼を見る郁の頭を撫でた堂上だが、
その手の感触に郁は高校時代の「王子様」を思い出したのだった。